
2月の6日は診療日程で緑色、途中からMFT、TBIのみとさせていただいて顎顔面矯正学分野教室の同門会で行われた講演会、新年会に参加させていただきました。

講演会は東京歯科大学の矯正科の教授に昨年ご就任された 西井 康 先生で
「歯科矯正用アンカースクリューの新たな応用」と題してのご講演でした。
どうして東京歯科の先生が、医科歯科で講演するの?と思われる方のため、最初のところでは医科歯科と東京歯科の歴史紹介から、昨年顎骨疾患プロジェクトで両校が共に研究に携わるきっかけがあったことなどから行き来が盛んになってきているとのことでした
医科歯科のメインキャンパスは御茶ノ水ですが、東京歯科さんは隣の水道橋です。また、1981〜2013の間はメインキャンパスを千葉に設定されていましたが、現在は再度水道橋にいくつものビルを建てて運営されているそうです。
医局の場所や雰囲気が先端のIT企業のような環境、フロア中央にフリースペースがあってミーティングが行えるのですが、外周には医局や教授室がクリヤーガラスで丸見え状態での設計だったとのこと。確か長野県知事が県知事室をリフォームした時に、そのような設計にしたというのを聞いた気がします。
オープンマインド、イノベーション、エボリューション、そしてフロンティア

歯科矯正用のアンカースクリューに関しては、この3年間毎年国家試験にも出題されているとのこと。学生が知識を必須とされていることを現役の歯科医師が知らなくて良いはずがありませんね。
以前は顎変形症の保険診療では行うことができず、自費算定だったものですが、2014年には保険導入となったことからも治療の幅の拡大、質の向上が期待できるものです。
2010年の日本矯正歯科学会では、私は顎変形症の術前矯正を行うにあたり、シミュレーションの重要性と治療方針によってはアンカースクリューが必要になるということを総合的に検案し、矯正治療の行いやすさだけでなく、歯の移動の結果として顎矯正手術を行う場合の骨片の移動量、干渉について6自由度での演算を行うよいう発表を行っています
(わーすごいって、ものすごい自画自賛で、自慢ですいません)
大学病院などとは異なり、研究目的で様々な許諾が得られるものではありませんので、当然のように法令を遵守し、また公の場で発表して啓蒙を行うため、いろいろ大変でしたねえ。

今見たら、ポスターで目線はイメージカラーのネイビーで行っていました。立体写真だったので浮き上がってくる目線の迫力があったので、いろいろ試していましたね。
最近、目線の入れ方について医療関係ではない方からの提案などもあって、再度興味を持っております。数年前かなあ、学会のイブニングセミナーでも、その類の質問をして、今では医科歯科の准教授となっている小川卓也先生を困らせてしまったことも思い出します。
この日、西井先生は白抜きの長方形目線でした。雑誌では黒い目線、黒丸目隠しなどもポピュラーですが、微妙に位置がずれると福笑いのようになってしまうので、難しいものです。
海外の学会では、目線は全くありませんが、逆にかならず患者さんに確認、承諾をいただいていることが前提です。医療を受けるという恩恵にあずかったのだから、治療情報は学術の発展に役立てていただくのが義務でもあるという考え方を持っていただけるのであれば、大変ありがたいものですね。人の技術は自分の物、自分の個人情報は自分だけのもので、人の役に立とうがたつまいが、とにかく自分だけのもの、、、そんな風潮になっていくと、悲しいものですよね。まあ、時代に応じて諸状況は変化せざるを得ませんが。
色合い的に肌色に近いナチュラルトーンの色見を選択しつつ、まったく同色の肌色ではとても違和感がある画像となってしまうので、いろいろ、まさに色々試してみる状況に日本はまだあります。まったくコンセンサスはありませんので、今後良い方向で学会指導に進んでいただけたら良いなあと、飲み話してました。

同じ山を通常のスマホカメラで撮影した場合と、トイカメラレベルですが立体撮影用の小型カメラで撮影したものです。トイカメラでも、画像解像度はものすごく上がっていて、1枚8ギガ超えちゃうので、ここに乗せるときには横幅で2844mmを200mmに落としています 8064Pixが567Pixですね
現在のイデアでは通常の一眼レフカメラにステレオアダプターとバウンスライト、背景スクリーンに背景影消しストロボを設定して、ナチュラルで審美的でありながら資料としてもしっかりとした情報が伝えられる顔貌写真を撮り残しています。でも、まだ完成系ではありません。これまでもカメラ本体のフィルム面の大きさで言えば4種類も試してきていますし、これからもレンズとフィルム面のサイズ関係でまだまだ変革がありそうです。
個人的には専用カメラの商品化を進めたいくらいなんですよねえ。必要とする機能設定もしっかりとしたビジョンがありますし、今の時代なら費用面もさほどではなく出来上がるのですが(すでにVR用や360View用で安価なシステムが市場には大量に見受けられています)、後々の画像補正のやりかたによっては見にくい立体写真になってしまうリスクもあるのが現状のIT環境なので、そのへんまで含めてしっかりとした処理方法の確立が望ましいんですよね。単なる遊びではなく、医療情報として認知を受けたいので。

そうそう、西井先生の講演の備忘録をしなければでした。
外科症例では2割くらいTAD使用
ALD−2〜−6に対して2〜3mmの遠心移動
ダイレクトアンカーでは1616を直接接着
左右非対称症例に関しての臼歯部歯軸の研究の案内からは
4番で12、5番で12、6番で17、7番で8度の左右差があったものを、オペ後では完全左右対称ではなく、2,2,4,5度の左右差は残るものの、差を減じていたとの後ろ向き研究発表。
まじめで、しっかりしているので、きちんと「後ろ向き」をなんどもおっしゃっていましたね。
非対称症例の術前、術後の表示でメントンの修正が良く進んでいた案内がありましたが、やはりそのような内容は立体写真で表現できたら、とても分かりやすいのになあ、、、と思いました。
今だったら、まずスライドはPCからの出力をモニターとプロジェクターに同時表示ですから、Wifiでスマホにも表示はできちゃうものです。
慣れていれば、少し小さめに表示することで裸眼での立体視もできますし、補助レンズを設定すれば最近の大き目なスマホ画面でも見ることができます。他の人と目幅が違っても、一人一人が端子を持っているならば、迷惑はかけませんからね

Jinsでリーディンググラスを購入する場合のガイドです 目幅と、より目の癖が人によって異なることを理解されているので、フレームの大きさ選びだけでなく、視点軸の調整も自分で行えるようにきちんと案内がありました

ここまでの丁寧な案内を行わなければ、一般に提供しにくいですねえ。立体写真を理解していただくのには、それだけ個人差があることを理解したうえで活用しなければね。と、ちょうど次回の学会発表の内容に含めて予定しております。
まあ、左右差を調整するのにあたり、ベースの顎骨の左右差に関して前後長さだけでなく歯槽骨の垂直的長さなども考慮すると、いろいろ要素が増えてむつかしいですね。
左右差が10度以上ある場合は、多くの場合内に倒れている歯を起こすのにTADをしているとのこと
この辺の話からは、非定型のシフト症例で、頬側にTADを打って臼歯部を起立させようとした場合、咬合力その他の条件はいろいろあるものだが、起立整直の変化量と、圧下の変化量の相関性があるや、無しやを質疑でもしようかなあとメモしていました。
実際の講演後には海老名の石渡先生が皮切りに、質問が次々とあったので良かったです。
コンベンショナルな治療メカで内側からリンガルアーチ、頬側からTADとする内容と、部分的にサージカルアシストをした場合の評価も興味ありますねえ。もしかしてすでに進めているかもしれませんが、どうですか!西井先生♪

写真左は森山啓司教授です。中央が西井先生。右側は横浜で開業されている横関雅彦先生、同門会の会長をなさっております。
この日、隣は宇都宮の檜山成寿先生:ひやま歯科クリニック院長先生
https://www.hiyama-dc.com/concept/でしたが、セミナー開始前に「最近、医局員は白衣ではなく、スーツなんだねえ」と話をしていました。「あ、でも教授は白衣だねえ」とも。 懇親会でのご挨拶、たいへん素晴らしくいつもいつも感動します。浅草寺のお線香のごとく、隣に座らせていただけるだけで、その落ち着いた話し方や話題の回し方について、ご利益にあやかりたいと思うものです。
で、非定型の場合もそうでなくてもシフトが強い場合、咬合力が歯の移動の妨げとなる力系になってしまうことが往々にしてあるものです。
セットアップモデルのシミュレーションを繰り返すと、どの部位の歯が起き上がらないとか、圧下されてしまうだろうとか、多少わかりますので、学術的には適切な咬合挙上の補助デバイスを用いたり、事前からあえてポジションをずらしてブラケット装着を行うことなどが提案できます。事実、そうやってみたこともありました。
しかし、そのような治療は上手な人でしかできないというか、考えて考えて、かつ臨床手技も思った通りに行える条件が無ければ、なかなか大変で「絵にかいた餅」になってしまうこともあります。
細かい個人差を含めずに、外力の排除を行う場合は、アーリーサージェリーというテクニックもありですね。

写真は懇親会の会場になってしまいましたが、まだ講演会の備忘録
それから、スケルタルな数値データに対して、オペとノンオペのボーダーを考えるという内容も。
西井先生はWits分析が好みとのこと。−10mm(ANBだったら―2度くらいかな)あたりがPPVでの50%だったと案内いただきました。
黒田先生は―4度がボーダーラインだなと以前おしゃっていた記憶がありますが、PPVは実際の治療を後向きに調べた結果です。なので、診断時にー4度が目安といっても、前歯部分の過蓋咬合の程度、顎骨形態から咬合力が強そうかどうか、顎骨の後方回転による位置変化を利用できるタイプかどうかなど様々な所見も含めて診断には当たっているものです。個別データのみで判断しているのではなく、本当に高性能なAIコンピューターが人の脳には備わっていますから、単純比較はできないものでしょう。

SIDがトイカメラな理由としては、こういった多少暗い場所での調整能力がないところでしょう。
左から、多分になってしまうけれども明海大学の教授をされている須田先生、海老名で開業されている石渡先生、講演された西井先生、森山教授ですね。この日、森山先生には症例発表を行うことの難しさを再度確認させていただくお話などいただきました
そうそう、3級のボーダーとTADは関係ないが(骨格的ベースのほうが診断に大きく影響するよね)開咬:オープンバイト(歯が離れてしまっていて噛み合わさない状態)に関しては寄与するであろうとの話。
MPでは38度位までは矯正で、それ以上ではオペで、とか
圧下変化量3mm程度までが実際の変化量だったとの調査結果。それら情報はもちろん統合的に判断に用いるものであり、また提供データも後ろ向きであることは再度確認。

懇親会会場は医学部病棟の上階にあるレストランだったのですが、大変きれいに街が見える場所でした。流行りの高級スマホであれば、「夜景もきれいに、手振れ無し」のはずなんですが、、、、
トイカメラでは、そうはいかず。
早期治療への適応として、上顎の急速拡大ならびに前方けん引に関して
まあ10歳以下で2mm程度の前方移動がデータであるそうですが、プレートタイプを埋入した時には4−5mm出るとのデータ。しかし、しかーし、しかし、施術を希望してくださる患者さんが、まったく出てこないと、、、、
口蓋前方部の左右にTADを用いて急速拡大装置の固定補助を行い、臼歯バンドからエクステンションアームを用いた場合、臼歯の挺出移動を補償するためには側方歯の咬合面をレジンカバーするタイプの拡大装置を選択とのこと。力学的検証も。
チャレンジングな数多くの症例を拝見させていただきました。

この写真は講演会の日ではなく、去年の顎変形症学会のときのスナップです。
西井先生は歯学部卒業後、一般歯科でのお仕事などを8年もされた後で入局されているので、歯科会の状況、一般的な社会人としての経験も多くお持ちの上で研究者になられています。なのに、ちょうど三次元データ研究の発表とかの時期が重なっていたことから、研究同期のようになってしまいましたので、いまではこうやってトラのいをかる写真も撮らせていただいていたりします。
1930年の榎本先生の巻頭言 ファンクショナルマトリックス のことも最後に いいねえ!!!
でも、写真が何も見えなーい 写真撮ったから細かいことメモしてなくて「いいね!」しか覚えていない

こんど、スライドいただけるか、相談しなければ、、、、
で、質疑になったのですが、石渡先生から皮切りに、カバータイプの設置期間は?(1年で一度外して掃除して、必要なら再装着)とか、治療同意書は挑戦的治療概要なのか、通常治療としてなのかなどから、
医局での講義だったからなのか、発表内容がとても分かりやすく、また皆が興味あるところだったのか、普段の学会の講演などと比べ、大勢の先生方が臆することなく多々質問をされており、本当に良い講演会だったなあと思いました。
治療日程の調整をいただき、ありがとうございました。たくさんの勉強をさせていただいてまいりましたので、今後の臨床にも何らかの形で役立てさせていただくことでしょう。
西井先生お疲れ様!!次は顎変学会かな?このところ、僕が口蓋裂出れてないですので、、、