イデ・アイデア雑記ブログ 
  記事の上部テキストです 丈夫じゃないけど、、

2010年01月25日

矯正歯科ネット相談室 あいさん への返答

矯正歯科ネットからの相談を受けました。質問は以下の内容です。

イデア矯正歯科様
http://idea88.jp)への相談内容
-------------------------------
あいさん

こんばんは。
一か月ほど前に下顎前突を外科手術によって治療しました。
手術では顎を動かす距離の長さから、下顎を下げるとともに上顎を前に出しました。
ところが手術を終えた今、上顎を前に出したことで手術前より鼻孔がより正面を向き、鼻自体が大きく見えるようになってしまいました。(いわゆる豚鼻に近いと思います。)

手術後一か月しか経過していないため、多少腫れは残っていると思いますが、
正直に言うと鼻の形の変化にショックを受けています。
今の鼻の形がイヤで、もし以前と同じような形に近づけたいと考える場合、やはり整形手術という手段をとるしかないのでしょうか。
かみ合わせを良くしていただいたのに悩むとはすごく傲慢だと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。

__相談者________
相談日時:2010/01/17/ 01:19
東京都在住
22歳 女性

とのことでした。
本サイトでの文字数が多くなりすぎそうだったので、先にこちらをメモとしてUpします。


回答

あいさん はじめまして
こちらはイデア矯正歯科の布留川 創です。

<はじめに>

回答が長くなりそうなので先にお言葉をかけさせていただきますが、「悩むとは傲慢」とのお言葉がありますが、そんなことはまったくありません。
顎矯正手術を受けた直後は自分が思い描いていたイメージと現実との違いや、今まで見慣れていた自分との違いに違和感を持つ方がいらっしゃるのは事実です。

今大変お悩みなのは良くわかります。

ですが、内容が重要なので長くなるのですが、最後まで落ち着いて読んでください。
また、気持ちの変化が多くあった場合には再度ご連絡ください。

**************

<前置き>
 質問内容からしますと、術式の説明も的確ですから、おそらくきちんと説明はお受けになられたのだと思います。
 この回答はご本人さんのために行うものですから、本人の知識にあわせ、専門的な説明が多くなります。他の方が読んでも難しいような専門用語も多く入ると思いますが、ご理解ください。また、患者様本人が「この意味が良くわからない」という部分に関してはサイトを通じて再度の質問にも対応できるはずですが、他の方からのご質問に対してはお約束は出来かねます。

*********************
<医療背景>

顎矯正手術により骨の形は平均的なバランスに近づくのが一般的ですが、何でも都合よく変化することばかりではありません。治療前でのバランスが大きく問題となっていたような場合、例えば今回のように上下顎とも切除して移動しなければならなかった場合などは本人が変えたかった下顎の部分(下顔面部)だけでなく、あまり問題としていなかった鼻や口周り(中顔面部)にも変化が生じます。
また、骨の変化は急ですが、軟組織やその動きの変化が順応するには相当な時間がかかります。

 一般的に考えて「鼻が上を向く」ということはLeFortT型(ルフォーいちがた)の上顎骨きりをしているのでしょう。当然、鼻下点がある程度前方に移動します。
 また、下顎オトガイ部の尖り具合や下顎骨の回転度(SteepMand?LowMand?)、前歯部分の垂直的重なり具合(OpenBite?DeepBite?)、総合的に見た顔面の垂直的長さのバランスなどを考慮して、上顎骨は前方に出すだけでなく、上方に移動したり下方に移動したりします。
 オトガイを大きく後ろに下げたい場合や、下顎骨のローテーション量を減らすために上顎の咬合平面を傾斜させたい時などは上顎骨の前方を下方に下げることがあります。そうすると鼻下が長くなり、一層「鼻が上を向く」ようになります。

 多少、鼻にも変化が出ることは説明を聞いていたかもしれませんが、実際の結果とのギャップにまだ戸惑っている時期なのではないかと予測します。後述しますが、シミュレーション技術が発達してきたといっても、患者様に良い理解をしていただくことができるほどの技術革新はまだ得られていないものです。

<お鼻の形について>

「今の鼻の形がいや」ということですが、これについては私は否定しません。
見慣れたものから変化すると最初は何でも拒絶感が生じてもおかしくありません。
人間の顔を認識するアルゴリズムは非常に複雑です。矯正医や外科医が横顔のレントゲン分析(プロフィログラム)を元に
「良くなったね」と言っても、お顔のお肉の動き方や微妙な影の出方などはまだまだ不自然な時期でしょう。
骨は手術直後に動いていますが、お肉や神経の具合が整うにはまだまだ時間がかかります。

個々の患者さんによりしびれや麻痺の間隔の戻りは違いますが、半年から数年微妙な違和感を感じる方もあります。

そのようにお悩みの時期の表情はあまり明るくなりにくいでしょう。そのときの自分のお顔の中であまり見慣れない部分があればあまり好きになれないかもしれません。

しかし、少し我慢して待ってみてください。そして、できれば新しい自分に前向きになって、好きになれそうなところは好きになってください。

 矯正医の方ではお口の中の状況変化だけでなく、お顔の形の変化も写真などの資料を残すことが通例です。手術直後の診察ではお口の調整だけで忙しいこともありますが、数ヶ月以内に腫れが引いた状態の資料も準備すると思います。
 そのときを目処にご自分のお顔を前から見るだけでなく、斜めや横からも客観的に見てみてください。もしかしたら、全体のバランスからするとあいさんに非常に似合うバランスのお鼻になっているなっている可能性があります。部分だけで見るのではなく、全体で見るようにしてください。
今のあいさんは手術により機能などが改善して気持ちも上向きであってほしい時期です。その時期までの期間をあまり「お鼻が気に入らない」ことを悩みすぎると表情まで曇ってしまいます。楽しいことも出来るだけ体験していただき、笑顔の中の鼻のバランスを見てみて下さい。


<やっぱり、見慣れなくて万足出来ないとき>
 それでもなお違和感を強く感じるという場合には、やはり整形・形成外科的手術を追加する場合があります。ただし、そのときの治療目標ですが「以前と同じ形にしたい」という目的意識ではなく、「今の自分に似合う形に修正したい」という気持ちで望まれることをお勧めします。
既に頭蓋骨としての土台の大きさ、形が変化していますから鼻だけ以前と同じにしてしまうと、その後なんとなく違和感が残る可能性があります。あるいは、元の形に戻すことは困難な場合もあります。

<手術時期>
 一定時期の後に骨を固定していたプレートやスクリューを除去する手術を行うことが最近では主流です。(中には吸収性の材料を用いて除去手術を行わない場合もありますが)そのときに同時手術が出来るかどうか、外科医との相談が必要かと思われます。時期としては半年以上先となります。
 そのとき、プレートの厚みなどもありますから、表情には再度微妙な変化が生じます。また、骨の継ぎ目の段差もまだ完全にはスムーズにはなっていない時期のはずです。その誤差を含めて考えると、もし患者さんの希望が細かくある場合には手術は1回ではなく、2回以上なるかもしれません。
 このあたりは目標設定や時期の希望により大きく変化するでしょう。この問題はやはり実際に執刀できる先生に相談して説明・判断していただくのが適切です。こちらの説明はあくまで一般情報としてご理解ください。

<でも、待つのはつらい、、、>
 上下顎同時手術を行ったということは、それ相当に顎のバランスが悪く、食事の問題も多かったことと思われます。顎の動きが整うにつれ、食事はだんだんおいしくなるでしょう。その変化した食生活は今からまだ60年、80年と続く楽しみの一つになります。若いうちにはあまり気にならないかもしれませんが、食の楽しみは年をとってから非常に重要です。

 あいさんはそのきっかけを手に入れたのですから、少し先の自分を考えて、今しばらく「待つ」ことに耐えていただけないでしょうか?

 とはいうものの、その時間があまりにも長く感じてしまうと心がつらくなってしまうときもあるようです。
先生は「待て」、というけど、私は「待つのがどうしてもつらいんです」というときには、率直に担当医に申し出て、メンタルケアーを希望してください。
 担当医は担当外科医でも矯正医でも構いません。あいさんが話をしやすい先生に悩んでいるという話をしてみてください。
 その担当医との話で気が晴れれば構いませんが、やはりどうもすっきりしないという場合には、あまり長いこと我慢しすぎずに心療内科・神経内科などへの紹介ももらうと良いと思います。担当医にとっても予後を診るにあたり大切なことですから、隠すことなく申し出ていただいて大丈夫です。
 

<おわりに>
 あいさんのご不安はわかります。
 時間とともに悩みが消えてしまう可能性もあります。
 悩みが消えない場合でも、解消する対処方法はあります。
 その処置時期に関しては少し相談が必要です。
 必ず、将来は笑顔になれるはずですが、
 今が少しつらすぎるというときにはメンタルケアーも考慮しましょう。
 ケアを受けることは悪いことではありませんから、安心してください。
 言葉では足りない部分もありますが、今後の治療もがんばってください。 

**********************

参考資料については 

徐々に以下の点について書き出したいと思っているのですが、相談の報告期日には間に合わないかもしれません、、、

 顎矯正手術前後の三次元的形態変化の研究について + 表情について

 重ね合わせの技術変化、開発時期ならびに現状においても初歩からの発表が続いていること
 
 顔面軟組織の日差、月差、表情差

 3D情報と実際の認知の違い、顔面の特徴点の困難さ、変化認知、

 60症例の術後変化を3Dでビジュアライゼーションし、移動量との比較検討を行った結果について  点群移動時の同一点抽出の困難さ

 論文化の難しさが情報流布の困難さにつながっている

 今後、情報共有化によりやっと発展が期待できる段階になってきた

 1998-2000年の
http://www.tmd.ac.jp/dent/nenpou99/nenpou98_00/nenpou98_00d06.pdf
 
http://jglobal.jst.go.jp/search.php?s=d&q=%E5%B8%83%E7%95%99%E5%B7%9D%E5%89%B5&t=2

http://jglobal.jst.go.jp/
posted by Orthodontist Hajime FURUKAWA at 22:34| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
ご相談しましたあいです。
お返事が遅くなり申し訳ありません。
布留川先生のご丁寧な回答、本当に嬉しく拝見して感激いたしました。
お忙しいなか貴重な時間をさいていただき本当にありがとうございます。


ご相談しました件ですが、先生のおっしゃるように今しばらく待ってみようと思います。まだ上顎に麻痺が残っていますし手術前後の顔写真の確認もこれからという時期にもかかわらず、何だか気持ちだけが先走っていました。


たしかに手術によって得られたかみ合わせや、今ではほぼ食べられる食事への喜びはとても大きいものがあります。与えられた幸せをしっかり受け止め、前向きに笑顔で生活していきたいと思います。


また顎を固定しているプレートについてですが、私はご指摘にもあった吸収性のものを使用しています。ですのでオトガイ形成がなければ半年後の手術は行われないと思います。その点もふまえて担当医の先生に容貌のことは相談していきます。


正直、鼻に関しては思いつめてしまうほど悩んでいました。ですが、布留川先生のアドバイスのおかげで気持ちが楽になりました。専門的な見解と悩みに対する親身なお言葉をいただけたことには感謝してもしきれない思いです。

最後になりましたが、つたなく要領の得ない私の相談にのっていただき、本当にありがとうございました。
矯正歯科ネットさんを通じて先生に出会えたことを心から嬉しく思います。

あい


Posted by あい at 2010年01月31日 06:39
あいさんへ

お悩みのところ、過分なご返答丁寧にありがとうございます。ひとつのきっかけになれたようで、幸いと感じております。

 矯正歯科ネットの本サイトにおきましては、更新がなされております。

 また、追加の記載はこちらに

http://idea88.sblo.jp/article/35109880.html

 残しております。

 寒い日が続きますが、お元気でお過ごしください。
 
Posted by イデア矯正歯科 at 2010年02月15日 21:18
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/34939239
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
記事の下部テキストです 日経平均株価は底値で、、、