
こちらの学会の臨床講演、トップバッターのASOインターナショナル 阿曽敏正氏の講演

に続いては大阪大学歯学部/株式会社アイキャット の十河 基文氏による
インプラント治療におけるナビゲーション −診査から手術支援まで−
という講演を拝聴しました。

従来のコンベンショナルなレントゲン診査は2時限もとい二次元情報です。
あくまでも二次元でしかないのですが、本来はそこにどのような形のものが存在していたのかを知識として記憶しているから、類推して意味のある情報を得ることが出来るものです。逆に言えば、解剖をちゃんと考えていないと、いくらレントゲンを見ても本当の価値を得ることはありません。
これに対し、近年の日本においては数多くのコーンビーム歯科用CTレントゲン撮影機が存在しており、立体的情報を得ることが容易となってまいりました。
しかしながら、その画像構築の手法いかんによって、得られる情報には雲泥の差があるのですよというお話です。
立体画像を見ただけで喜んでいたり、わかったつもりになっていてはまだまだだと、骨質まで読みましょうという説明のスライドです。

その後、歯列模型とCT骨格の合成のスライドも出てまいりました。
私が大学での論文を出させていただいた内容は、この合成作業を行なうに当たって生じる誤差がどのくらいあるものなのか、どのように重ね合わせを行なうのが論理的であろうかという調査でした。
昔はいずれの計測データも荒く、これらデータを統合するCADソフトウェアの性能も低かったのでかなりの工夫を要しておりましたが、近年では「同じ形なんだから、同じように重ねあわせなさい」とソフトに命令すれば高精度な重ね合わせを行なえてしまう状況になってきています。
とはいえ、パソコンは機械ですので、命令の仕方が悪いと結果もおろそかなものですから、基本的な知見は必要でしょう。

CTの利点はいろいろな方向から物を見ることが出来ることですね。
ただ、それについても先日悩ましいことがありました。詳細は後日としますが、CTでいろんな方向から切ってみる事はできますが、誤差もありますし、偶然データに現れない問題も中にはあるということです。

こちらの先生はしっかりされていて、ちゃんと「過信は禁物」という説明までしてくださいました。
「最先端の技術を用いています」と宣伝されている場合、確かに最先端はすばらしいのですが、それを用いる術者が対応できているのかどうかのほうが重要です。しかしながら、一般市場の原理において、そのことまでを理解して医院選びを出来ている患者さんはどの程度いらっしゃるのでしょうか?
医療人のモラルも重要ですが、患者さん達が見る眼を持つことも大切です。見る眼を養うには知識が必要ですが、その知識を得る機会がまだまだ少ないですね。
さて、講演の後では業者展示とポスターを見学しました。

私がインストラクターをしています、OrthoCADという矯正用のソフトウエアの会社も、このタイプの光学式スキャナーを開発しており、アメリカでは市場に存在しています。日本に導入された際には、今までよりも一層スピーディーな作業が行なえる可能性があります。

会場を後にするときに気がついた学生さんへの注意事項です。
なんでも、説明責任が求められてしまう難しい時代なのだと感じました
「猫を乾燥機に入れてはいけません」というのと同じくらい悲しいです

これまでもCAD・CAMの技術は発展してきていますが、今後もより使いやすい形で、より高精度に発展は間違いなく進むものです。
ただ、パソコンもそういう傾向がありますが、高性能=よいもの とは限りません。高性能なパソコンに使いにくく、重いソフトウェアをいれて無理やり動かすのは上手ではありません。
やはり、はさみは使いようです。今の市場技術を用いれば、歯科用機材の使い勝手はもっと良くなるはずなのですが、まだ上手に統合できていないのが現状です。今後の健全なる成長発育に期待をしています。